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南佐久中部森林組合 新津清秀さん(森林評価士)

「林業として、成り立つために。」

南佐久中部森林組合 新津清秀さん(森林評価士)

6月中旬、カラマツT&Tパネルの原料となる木材を供給していただいている森を視察するために、長野県南佐久郡の北相木村(きたあいきむら)へと足を運びました。

始めに、森を管理されている「南佐久中部森林組合」にうかがった際、私たち取材チームを温かく迎えてくださった担当の新津さん。

その日もお仕事でお忙しい中、快く私たちを北相木村のカラマツ伐採地や植林地へご案内してくださいました。そのとき連れていって頂いたカラマツの伐採現場の様子は、前回の記事で公開していますので、ぜひご覧ください。

カラマツT&Tパネル用のカラマツ丸太購入地域


始めに案内していただいた北相木村のカラマツ伐採現場

– はじめにうかがった、北相木村の山奥にあるカラマツ伐採地で、お仕事中の職員の皆さんにお話をお聞きしたあと、新津さんは私たちに「植樹を終えた森」をご覧になりませんか?と、違う森まで車で誘導していただくことになりました。


森から森へ移動する途中、木材の保管場所へ。

– 次に向かう予定の森へ移動している途中で、新津さんが、村の中にある「北相木木材センター」(伐採した木材の保管場所)へ寄ってくださいました。


合板のために使用される大量のカラマツの丸太

新津さん「(上の写真の奥の丸太群を指さしながら)あそこに積まれているのは合板用の丸太です。現在、市場のカラマツは合板としての利用がメインで取引をされているのですが、合板に利用する木材というのはそこまで良い木ではなくていいんです。」

-「ものすごいたくさんの丸太ですが、そこまで良い木ではない?」

新津さん「ええ。積まれているのはB材といわれる2級品の丸太です。状態の良いA材は製材用により分けて、林友ハウス工業さんのカラマツT&Tパネルなどにお渡しするためにこちら(下の写真)に分けています。」

カラマツT&Tパネルのためにより分けられた丸太群

新津さん「私たちはこのように、丸太の品質ごとに用途に応じて仕分けをしているのですが、いま、業界的にA材を使用する製材の需要が少ないことに合わせ、価格も合板とそれほど変わらないため、状態の良いA材までも品質の劣るB材と一緒に合板用として市場に出してしまうところが多いんですね。」

-「お金を生むためには、そういう現実があるんですね。」

新津さん「そうなんです…。もちろん私たちの組合ではそういうことはしていないのですが、いくらそうしているのが他のところだといっても、林業全体で見るとその状況は良いことではなくて、大切に形を揃えて育ててきたカラマツの価値を最大限活かして使ってもらう流れを維持したいんです。」

-「はい。」

新津さん「そういう正しい流通が続くことによって、森の所有者のもとに良い木材に対する多くの対価が渡って、次の仕事ができるようにしていくことが大切で、たとえば林友ハウス工業さんのように良い状態のカラマツを活かすための商品開発をしていただいているのは、我々にとって非常にありがたいことなんです。」

-「ありがとうございます。我々も良い商品を維持できるよう努力します。」その後、私たちは北相木木材センターをあとにして、伐採後に植林を終えたという森へ向かいました。

植林を終えた、10ヘクタールのカラマツの伐採地

新津さん「この場所は10ヘクタールで25,000本の苗木を植え終えたところです。」

– 「1ヘクタールを植樹するのに、どのくらいの費用がかかるのですか?」

新津さん「森の所有者に主伐(※)で得られた収入から21万円/1ヘクタールを負担していただいて、地ごしえ、植栽(2,500本/1ヘクタール)、下刈り5回、除伐までの10年間の施業を森林組合が行います。」

※)主伐:更新または更新準備のために行う森林の上層木の全面的な伐採。

– 「とても費用としては少ない中での管理ですよね?」

新津さん「そうですね。とても少ないです。でも、その結果、多くの所有者が再造林を行ってくれます。我々としては少ない管理費ですが、このような形態でなければ再造林はなかなか進まないでしょうね。あとの足りない部分は補助事業をうまく使って対応するんです。」

– 「なるほど、再造林の補助事業もうまく使うんですね。」

新津さん「はい。実際にはカラマツを再造林して10年まで育てる費用は、1ヘクタール220万円以上かかると思います。国県町村の補助事業を利用しても、1ヘクタール40万円ほどの自己負担が必要になります。しかし、それでは再造林が進まないので、事業費を低く抑えることで自己負担を1ヘクタール21万円としているんです。」

長野県|信州の森林づくり事業(森林整備)事業について

ウッドショックで分かった林業の収まりどころ。

– 「森に自然に植わっている木を切って売るだけでは、林業が回らないわけですよね。」


新津さん「こうやって今、森の木を伐る林業者は先代のおかげで仕事ができるのであって、そういうことを経験すると、次にね、子孫のだれかが木を切ることができるように植えておかなければいけませんので。

– 「金銭的には厳しいけど、未来のために続ける必要があるんですね。」

新津さん「そうなんです。ただ、そこに、去年のウッドショックがありました。ウッドショックの際の木材の取引価格は、それだけの金額で林業が成り立つ価格だったんです。ですので、やはり木材の取引価格がある程度の水準を維持するということが大切なんですね。昨年のままの勢いでしたら、木材だけで林業が成り立つ状態でしたから。」

– 「ウッドショックという外部要因ではあったけど、林業の収まりどころが見えたんですね。将来的なカタチとして。」

新津さん「ええ。やっぱり、林業として成り立たっていかなければいけませんから。いつまでも補助金を頼りにしているのでは、先の展望が見えないですからね。それでもいま、この地域の人たちがこうやって再造林を続けてくれるので、この先がまたつながっていく。今は「先人が、カラマツを植えてくれたお蔭だ。」という声が多く聞こえるので、この感覚を所有者の皆さんの未来に届けられるようにできると良いなということです。」


さいごに。

実際に森をこの目で見て、新津さんに聞いたカラマツ林業の大変さ。だけど未来を見据えて再造林を続ける姿に感銘を受けました。

さいごに新津さんが「私たちが植えるものをきっちり植えて、しっかりいい木が取れる山を作る。そのためには、カラマツT&Tパネルを使用してくださる人たちがいることが非常に重要で、ありがたいんです。」とおっしゃってくださいました。私たちも、カラマツの森を維持するために、良い商品を多くのお客様へお届けできるよう、未来へ向けて努力を続けたいと思います

森の声

「林業として、成り立つために。」

南佐久中部森林組合 新津清秀さん(森林評価士)

「大切に使っていただきたい。」

南佐久中部森林組合 職員のみなさん

暮らしの声

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